なぜよく晴れた休日に家で工作するのか

涼しいし静かだし最高
せっかくいい天気なのに
家で黙々と工作する話





目次

いい天気には工作を

待ちに待った三連休。梅雨に戻ったかのような天気が続く中で、久しぶりの青空。そう、こんな素敵な日は家にこもって工作に限ります。
もちろん晴れた日に外に出るのは最高。でも、連休となると話は別。街に出ても喧騒から離れても、どこもかしこも人でいっぱい。都会は好きだけど人混みは苦手な筆者。そんなときは、涼しい家にこもるのが最高。無理に外に出なくたって、素敵な休日は過ごせます。ほら、早速大渋滞のニュースやツイートがちらほら…

工作は王道

ゴルフ・キャンプ・読書・ゲーム・アニメ…うーん、どれも素敵。しかし、あの頃からそのまま大人になってしまった筆者にとって、趣味の王道といえばやはり「工作」。誰かが決めたルールはなく、何をどこまでこだわるのか、すべてが自分次第。一度没頭してしまうと、いくら時間があっても足りません。何か趣味を探している人、あるいは工作に没頭する気持ちが理解できない人へ贈る、筆者的「工作」の魅力。

何を作ってもOK
はじめた瞬間から立派な趣味

今日の筆者の工作テーマは「Nゲージ」。いわゆる鉄道模型。飛行機も車も魅力的だけれど、一番身近な存在の鉄道が、何かと工作の中心になります。

工作のテーマは無限大。同じ乗り物でも本当に乗れてしまう物を作ってしまう人もいるし、実用的な電化製品や自作PCを作る人、「DIY」も立派な工作と言えます。自作PCやプラモデルといった、いわゆる「正解」の手順があるものは「工作とは呼べない」と言う人もいます。確かに「組立」や「作業」といった方が近いものもありますが、「自分の手で作る」という魅力は十分にあります。それに、一から部品やパーツをすべて作れる人などいません。どんな作品も必ずどこかで「買った」ものがあるはずです。本当に全部自前で揃えたのなら、それはもう趣味ではなく仕事にした方がいいと思います(実際簡単に真似できないからこそメーカーが仕事として成り立っている)。 

基本的に、他の趣味は「完成品」が売っています。あなたが買おうが買わまいが、ゴルフクラブや楽器は売られています。しかし、工作は違います。今の時点で、世の中にないものを生み出すのです。もっと言えば「何を作ろう」と考えているときから、工作は始まっています。すべてを一から計画し、完成に向けて黙々と作業する。手先の器用さや習熟度は重要ではありません。その自由度の高さと気軽さこそ、最大の魅力です。

今日の作業

さて、今日の筆者の作業はと言うと…

電車の横に付いている「行先表示」を見たことがあるはずです。しかし、この模型ではそのスペースが空っぽになっているので、

付属のシールを切り取って、

貼る。他にも、

パーツを切り取って、穴にはめる(ピンセット先の部品は約4ミリ)。

「工作」を語っておいて、さすがにこれでは怒られそうではあります。でも、今日はこれをやると決めていたから、仕方がありません。実際どれも大切な作業だし、実はこの「単純さ」に没頭の沼があります。

精神統一・無の境地

正直、筆者は手先は器用な方ではないし、手順書も適当に読み流してしまうような横着人間です。工作を始めるまでは「面倒だな」と思ってしまうことばかりです。そのはずなのに、一度作業を始めると3時間も4時間も経ってしまうくらい、時を忘れて没頭してしまうから不思議なものです。

もちろん、何かを設計したり課題の解決策を考えているときが一番楽しいものです。しかし、一通り段取りを終えた後の単純作業も、それと匹敵するくらい魅力的な時間になります。

よく「同じ作業をしていて飽きないのか」と言われます。いつもの仕事だったら確かに飽きますが、工作をしていると「飽き」よりも「無の境地」が先に来ます。特に深く考えていないのに、手足が勝手に動き続けるのです。あなたにも経験があるのではないでしょうか。時には、目の前の作業と全然関係のないことで頭が満たされます。仕事の課題、過去の失敗、決めかねているメールの返事…。雑念が渦巻いている状態を「精神統一」と言うのは不適切な気もしますが、感覚が研ぎ澄まされていく感覚です。手を動かしている間に頭の中が整理されていきます。

そんな「境地」の世界は工作だけにあるわけではありません。ゴルフやテニス・ランニングや登山と言った「スポーツ」の世界では似たような境地に達するという話をよく耳にします。筆者も学生時代は野球に没頭しましたが、その境地をよく経験したものです(そうしないとやっていられなかったのもあるが)。フィールドは違えど、集中したときの「ゾーンに入った」感覚が味わえるかもしれません。

いい音楽に出会える

何かを切ったり叩いたりする音も心地良いものです。しかし、作業にはやはり音楽が欠かせません。工作をしていると「いい音楽」に出会うことができるのも、大きな魅力だと思っています。

お気に入りのサウンドトラックや「作業用BGM」がある人も多いと思います。カフェで勉強や読書をしている人を見ると、必ずと言っていいほどイヤホンをしています。しかし、本当に「聴いている」人はどれくらいいるのでしょう。こう言っては何ですが、「読み書き」をしながら「歌を聴く」ことは難しいように思います。どうしても、どちらかの手が疎かになる(刺さる曲であればあるほど)。周囲の音を遮断することが目的と言われればそれまでですが、その場合は結局、BGMも邪魔に感じて終わる人もいるのではないでしょうか。

しかし、工作はそうではありません。頭の中で処理すべき文章や書き出す文章がないから、BGMが邪魔だと感じることは少ないです。2時間越えだったはずの、YouTubeの作業用BGMが終わるたび、びっくりします。今まで聞き逃していた、あるいは聞き飛ばしていた素晴らしい曲に出会えるかもしれませんよ。

側から見ていて面白いわけがない

YouTubeで、誰かが工作している動画を観たことがあるかもしれません。たまに作業風景が面白い動画もあるけれど、基本的には面白くないと思います。冒頭を見たらどんどん飛ばして、最後の完成形を見て終わり、というパターンの人は多いでしょう。あるいは超早送りかも。何かを作るときは、こだわる程に細かくなり、地道で、地味になります。

自分には工作はできない、あの人がなぜ工作にハマるのか理解できない、という人の気持ちはよく分かります。完成品が売ってるならそれを買った方が綺麗だし早い。同じようなものを何個も作ってどうするのか。そう思っている人も多いはずです。

工作の魅力を伝えることは非常に難しいものです。なぜなら、工作の醍醐味は「自分の手で作り上げる」ことにあるからです。正直筆者は、他人の工作動画を見通すことはほとんどありません。ピンポイントでこの作業が分からない、仕組みを知りたいというとき以外は、作業風景を見ようとは思いません。工作が趣味!と言っている人間がこうなのですから、側から見ている・見せられている人に伝わるわけがありません。スポーツのように分かりやすい見せ場やモーションがあるわけでもありません。工作が面白い、と思ってもらうためには、実際に自分の手で何かを作る体験をしてもらうことです。

「工作」という趣味を理解する、あるいは理解してもらうハードルは、他の趣味に比べても高いかもしれません。

何を作っているのか

作るものは人それぞれ。再現したもの、空想のもの、飾るもの、実用的なもの。筆者の鉄道模型の場合は、再現したもの・飾るものです。彫刻や絵画のような芸術的な価値もなく、実生活では全く役に立ちません。子どもの頃に家族旅行で乗った電車や、学生や大人になって毎日使った電車といった「思い入れ」馳せて、作ったり集めてたりしています。飛行機や車も同じ。

筆者の場合は、基となるモデルの「背景」や「思い入れ」が最も大切ということになります。だから、代わりが効く。手元から無くなってしまっても、まったく同じモデル(あるいは材料)が手に入ればダメージはありません。一方で、基となるモデルより作ったもの「そのもの」に思い入れがある人もいます。旅先で手に入れたものを使ったり、誰かと作り上げたり。これは、代わりが効かない。

モデル自体に大きな意味を持たない人もいます。言い換えれば「何かを作る過程そのもの」が好きだということです。これは、難しい。全く同じ時期に全く同じものを作ったとして、片方は良い出来だから大切、もう片方はどうでもいい、みたいなことが起きます。

嗜好を挙げればキリがありませんが、一つ言えるのは「作品は目に見える形だけではない」いうことです。単に出来栄えの良さだけではなく、作っているときの出来事やそのときの気持ちが、ありありと思い出せることに気がつきます。その思い入れがプラスされるからこそ、作品は唯一無二になるのです。自分にとって、最高に価値があるものになるのです。これはどこにも売っていないし、他人に見せられないような下手な組立てや塗装であっても、売り物に勝る瞬間が、必ずあります。もしもあなたが、大量に作品を抱える人に困っているなら、この話を頭の片隅にでも残してほしい。その人は作品のどこに価値を見出しているのか、ぜひ知ってほしい。もしもあなたが、誰かを困らせていると思っているなら、この話を頭の片隅にでも残してほしい。その人へ作品のどこに価値を見出しているのか、伝えてほしい。どちらかがほんの少し歩み寄るだけで、状況は良くなるはずです。

趣味はどれも無意味

これから工作を趣味にしたいと思っている人もいることでしょう。スポーツと比べると華やかさは劣るし、作り上げたものに金銭的価値はつかないかもしれません。しかし、立ち返ってみると「趣味」とは誰かの為にやるものではありません。自分にとって今この瞬間を「楽しい」と思えるかどうかで、あなたにとってのその趣味の価値が決まります。誰かに強制されるものでもないし、誰かが教えてくれるわけでもありません。もし、誰かの役に立ちたい、対価を貰いたいと意味を求め始めたなら、それはもう「仕事」の領域でしょう。言い換えれば、どんな趣味も「無意味」です。誰にも評価されない代わりに、自己満足の為だけに行動できる。それが趣味です。優劣はありません。

晴天の工作は最高です。しかし、まずは工作の魅力を知ってほしい。これから、天気が悪くて本当に出かけられない日もあるでしょう。そんな休日がやって来たなら、ぜひ一度「工作」をしてみてほしいと思います。きっとこれまでにない、貴重な経験となるはずです(塗装済みプラモデルや組み立てるだけの大人の科学マガジンがとっつきやすいのでオススメ)。


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東京で暮らす会社員です。
都市や交通について気ままに発信しています。
それなりにリアルかと思います。

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